孤独死のまま発見されない現場とその後の特殊清掃までの流れ
孤独死は、一人暮らしの人や家族と離れて暮らしている人にとって、実は身近な問題です。日々の生活に追われているとついつい忘れてしまいがちですが、自身が亡くなるだけでなく、一人暮らしをしている親族などが亡くなることが考えられるためです。孤独死の原因には、病気や事故などがありますが、大抵の場合には、発見されるまでの時間が多くかかることから、遺体の処理やそれに伴う特殊清掃が必要となるケースがあります。
遺体の発見から特殊清掃の開始まで
孤独死による遺体が発見されるパターンとして、近隣の住民や大家などの物件の管理者から警察に通報されることが最も多く見られます。どちらかと言うと、地域のコミュニティなどの近隣との交流が少ない人ほどその傾向があります。
例えば郵便受けに新聞やチラシが入ったまま溢れていたり、部屋のあたりから異臭や多くの害虫の発生がある場合など、異変を感じた近隣の住民が、警察や物件の管理会社に連絡することで、孤独死による遺体を発見することにつながります。また、気温が高くなる夏場は遺体の腐敗の進行スピードが早いため、周囲は強烈な腐敗臭にみまわれるため、近隣の方が異変に気付くといったケースが多くあります。
遺体の発見後、はじめに警察は事故案件として現場での事件性の有無を検証します。また、身元確認のために賃貸契約書や住民票などの書類を参考にしながら、親や子、兄弟姉妹、親戚の順番に遺体の引き取り手を辿っていくことになります。そして、発見されたご遺体は後日改めて葬儀なども含めた手続きを進める流れとなります。
警察による検証は通常1〜2日ほどかかり、事件性の疑いが無いと断定されてから、弊社のような特殊清掃業者が現場に入り、清掃作業を進めていくことになります。
孤独死現場の清掃をおこなう特殊清掃
孤独死現場の清掃は通常のハウスクリーニングとは異なり、特殊清掃を依頼することがほとんどです。
ご遺族や物件の管理者が清掃することもありますが、遺体特有の強烈な臭いや体液などによる壁や床への染みなど、通常の清掃では取り除くことができない汚れを綺麗に落とす必要があるため、やはり専門のプロの手による特殊清掃でなければ難しい面が多くあります。
そして、当然ながら現場は凄惨な状況を極めていることが多く、上記のような物理的な要因だけでなく、精神的な理由からご依頼されるケースが主といっても過言ではありません。
また、状況はさほど深刻でなく、一般的なハウスクリーニング業者に依頼したものの、どうしても遺体が放つ特有の臭いが消えないことから、改めて特殊清掃を依頼されるケースもあります。特殊清掃は、状況に応じて下記のような作業も含めた清掃が実施されます。
体液の染みた壁や床の貼り替え
床下や壁紙の下の石膏ボードなどの部材の交換
オゾン消臭器などの専用の機器を使用した消臭作業
遺体の腐敗によって発生したハエやゴキブリなどの害虫の駆除
その他にも、不用品の片付けや遺品整理を含めることもあります。特に賃貸物件の場合はお部屋をしっかり原状回復したうえで、管理会社や物件の所有者に引き渡すことが必要ですので、一般の方では対処しきれない分野の清掃となります。遺体現場で作業は、ある種強靭な精神力も求められることから、特殊清掃業は極めて専門性の高い業種のひとつと言えるでしょう。
特殊清掃が必要なケース
特殊清掃が必要なケースには、孤独死されてから時間が経過した遺体のある部屋や建物が当てはまります。
時間が経過した遺体は死臭を放つため、臭いの除去が最優先事項となります。また、遺体の腐敗によって細菌が繁殖することで感染症のリスクが高まるため、防護服や業務用マスク等を装着して作業を実施する必要があります。
遺体から流れ出た体液による壁や床などの染みは、いくら強力な洗剤を使っても落とすことは難しく、たとえ表面的に汚れが除去されたとしても、場合によっては壁紙を剥がした後の基礎部分や床下まで汚れが付着していることもあります。
このような場合、壁紙や床の張替えはもちろんのこと、床下や石膏ボードなどの基礎の部材の交換をすることで臭いのもとを根絶することになります。さらに遺体や部屋に残された食品などの腐敗は、ウジやハエ、ゴキブリ、ネズミなどの害虫・害獣の大量発生を引き起こします。
害虫の発生は現場のみで収まることはなく、近隣の衛生面にも大きく影響することから、早急かつ完璧な駆除が求められます。
特殊清掃と遺品整理
特殊清掃が必要な孤独死の現場の場合、清掃と同時に遺品整理を行う必要があるケースも少なくありません。
家具などに付着した体液などの汚れを除去しつつ、形見の品などのご遺族にとって残しておきたい品物とゴミなどの不用品に分けていくことで、効率よく作業を進めることにつながります。遺品整理はご遺族が行う、もしくは遺品整理の専門業者に依頼する場合もあります。
しかし、特殊清掃まで一貫して請け負える業者はなかなか該当がありません。遺品整理を業者依頼され、お荷物の物量から見積もりを出してもらったものの、いざ作業員が現場に入ると、臭気などの理由から追加請求がなされるケースもあるようです。
費用の面でも安く収まるということがあるためです。遺品整理を含む特殊清掃を開始する前には、業者と綿密な打ち合わせを行い、残すものと処分するものをきちんと確認しておくことが大切です。その時に決められないものは保留として、後日判断するようにしましょう。一旦不用品として処分してしまうと元に戻すことができないため、取捨選択には慎重な判断が必要ですが、現場の腐敗が進行している場合は早急な清掃作業が求められます。
このようなケースは、数多くの現場を経験しているベテランのスタッフが在籍する専門業者でなければ、スムーズかつ的確に進行していくことが難しいと言えます。